本部会館 改修工事 2024年11月30日竣工
全日本海員組合の本部会館の大規模改修工事が、2024年11月30日に竣工いたしました。
- 所在地: 東京都港区六本木7-15-26
- 改修工事設計: 有限会社野沢正光建築工房
- 改修工事施工: 株式会社竹中工務店




本組合の本部会館は、昭和39年(1964年)、拠点を神戸から東京へ移転することを決定し、戦後の建築界を牽引した建築界の巨匠・大髙正人氏の設計により建設されました。それから43年経過した平成19年(2007年)に、老朽化や耐震問題、周辺開発の状況などを踏まえ、本部会館に関する検討委員会を設置し、本部会館の建替えや移転、大規模改修など、今後のあらゆる方向性ついて検討が開始されました。
そのような中、平成28年(2016年)に国立近現代建築資料館において「社会と建築を結ぶ大髙正人の仕事」展が開催され、現存していた本組合本部会館が取り上げられ、建築業界の注目を大いに集めることとなりました。このことが、歴史的にも貴重で価値のある本部会館を継続利用する判断のきっかけとなり、大髙事務所出身で、歴史的な建物の保存・継承活動に携わってきた建築家・野沢正光氏に本部会館の改修工事を依頼しました。耐震性能などの調査が十分に行われた後、基本設計、実施設計を策定。第83回定期全国大会にて改修計画と予算が承認され、令和5年(2023年)1月10日より改修工事を開始いたしました。
約2年にわたる改修工事を経て、令和6年(2024年)11月30日に完工した本部会館は、新築当時の意匠を最大限に保存・修復しつつも、室内の温熱性能や換気、照度といったオフィスとしての機能の最新化を両立させております。


本部会館に隣接して建設されたJSSビルから直結する公共スペースである地下中庭「サンクンガーデン」を復活させました。


また、子どもたちや一般の方でも来館可能な「展示室」と「図書資料室」を新設しました。
展示室は、100年以上続く海員組合の活動の歴史や本部会館建物の紹介、「戦没した船と海員の資料館」の資料展示、海運・水産業の紹介などの内容となっています。


図書資料室では、本組合が所有する海運・水産業に関する一般図書や組合の過去資料などを閲覧することができます。また、操船シミュレーターやVRゴーグルを設置しており、船の疑似乗船体験が可能で、各種モデルシップも展示されるなど、来館した子どもたちが見て学び体験することで、船員の後継者の確保・育成を図るほか、一般の方に海運・水産業や船員社会への理解を深めて頂くことを目的としています。


2024年12月10日に改修工事の竣工を記念し、改修工事竣工セレモニーを開催し、関係省庁、海運・水産業界の関係者約200名の方々にご出席いただきました。松浦満晴組合長、田中伸一組合長代行よりあいさつとともに、103年にわたる海員組合の活動の歴史と、今回の本部会館改修・保存工事の意義や内容などについて説明を行い、ご来賓の方々からのあいさつを頂き、竣工を記念したバイオリンとピアノによる二重奏が披露されました。
また、12月10日と11日には海事関係者向けの内覧会、12月7日・8日には建設業界向けの竣工セレモニーと内覧会を開催し、生まれ変わった本部会館の姿を多くの方に直接ご覧頂くことが出来ました。
本部会館の紹介
・竣工当時の本部会館(1964年)




全日本海員組合の結成は戦後すぐの1945年10月ですが、前身の日本海員組合の結成(1921年)から数えると、100年を超える歴史のある日本で唯一の産業別労働組合です。
戦前以来、海員組合の本部は神戸に置かれていましたが、戦後に活動の中心が東京に移ったため、移転の可否が問題となっていました。しかし、神戸は海上労働運動発祥の地であり、初代組合長が私財を投じて建設した神戸の本部建物からの移転には強硬な反対意見もありました。
3度にわたる全国大会での議論の末、東京への移転が決定されたのは1959年でした。そこから敷地選定の結果、現在の六本木の敷地に決定し、1961年に建築家・大髙正人氏に設計を依頼します。
こうして、1964年に「組合員の団結の象徴」として完成したのが現在の本部会館です。
以来60年間、組合の拠点としてその活動を支えてきました。
- 設計:大髙建設設計事務所 施行:鴻池組東京支店