船員と裁判員制度

裁判員制度に関するQ&A

Q1: 裁判員になったら具体的に何をするか。
選ばれたら、裁判官と一緒に刑事事件の公判(審理)に出席する。公判では、証拠として提出された物や書類を取り調べるほか、証人や被告人に対する質問が行われる。裁判員から証人等に質問することもできる。
次に、評議に参加して、そして評決を行う。証拠に基づいて、被告人が有罪か無罪か、有罪だとしたらどんな刑にするべきかを裁判官と一緒に議論(評議)、決定(評決)する。有罪か無罪か、有罪の場合どのような刑にするかの裁判員の意見は、裁判官と同じ扱いになる。次に、判決の宣告をする。評決内容が決まると、法廷で裁判長が判決の宣告をする。裁判員としても仕事は、判決の宣告で終了する。

裁判員候補者の選定方法

Q2: 選挙権のある人の中から、翌年の候補者となる人を毎年くじで選び、裁判所ごとに候補者名簿を作るとあるが、「くじ」とは具体的にどのようなものか
具体的な方法(手動式、コンピューターなど)は、今後決まる。作為が加わらない公正な方法が取られる。

裁判所からの通知等

Q3: 独身で一人暮らしの船員の場合、乗船後、裁判所からの候補者通知や呼出状が留守宅に配達され、下船して自宅に戻って初めて知り、期日が経過していたら罰則適用になるか。また、裁判所からの調査票や質問票に、留守宅家族が回答することはできるか。
下船して自宅に戻るまで知らなかった場合は、その事情を裁判所に説明する。やむを得ないケースと認められれば罰則は適用されない。また、調査票や質問票に本人が回答できない事情があれば、その旨裁判所へ連絡する。
Q4: 通知は6週間前に来るとされているが、乗船中や長期の海外旅行などで通知に気がつかなかった場合でやむを得ず無断欠席等した場合、罰金等の処分があるか。
呼び出しは、候補者の出頭義務を発生させる処分。義務違反には過料が科せられるので、確実に相手方に了知してもらう必要がある。そのため、「呼出状」の送達方法は、通常の郵便送達ではなく、本人または同居の家族に直接手渡される。本人のみで同居の家族がいない場合は、送達できないので出頭義務は生じない。

裁判員辞退の可否

Q5: 候補者に選ばれた後、他府県に転居した場合どうなるか。
辞退の申立ができる事由に「住所または居所が裁判所の管轄区域外の遠隔地にあり、裁判所に出頭することが困難である」と裁判所が判断すれば辞退できる。当該裁判所が候補者の住所等から見て、その地域においてその者にとって通勤圏内にあるかなどを考慮して判断すると思われる。
Q6: 船員は乗船スケジュールが決められており、また船員不足で代替要員の確保が難しいので、乗船中あるいは乗船予定期間中、裁判所からの呼び出しへの対応は困難。このような場合、辞退の手続きが必要か。
辞退は可能。裁判所から送られる調査票に乗船スケジュールを記入して回答する。その際、乗船スケジュールを証明できる書類、例えば会社の証明書、乗船指示書、スケジュール表などがあれば、その写しを添付する。
Q7: 下船中で裁判所からの呼び出しに対応できると思っていたが、会社から緊急乗船を命じられた場合、辞退できるか。
代替要員が確保できなければ辞退は可能。裁判所へ相談する。
Q8: 特に漁船船員の場合、出漁時に乗船しないと途中から乗船できないので、出漁できないと多額の稼得機会の喪失となる。辞退理由として認められるか。
大幅な収入減となる場合には辞退が認められるケースがあり得る。認められるレベルがどの程度かは一概に線引きできないので、裁判所に個別に相談する。
Q9: 海上生活(年間/外航船員:約8カ月乗船・4カ月休暇、内航船員:約3カ月乗船・1カ月休暇)をしている船員は、船員であるという理由から参加が困難であるとして、候補者の辞退は認められないか。
船員を理由に辞退することは、認められないと思われる。
候補者名簿に登載された場合は、毎年12月ころに裁判所から通知書が送付され、その時点で、乗船予定がわかっている場合は、同封された調査票に必要事項を記載して裁判所へ返送すれば、その時期の呼び出しが考慮される。
次に、裁判員等選任手続期日から遡って6週間前に裁判所から「呼出状」が送付されるので、その時点で乗船予定がわかっている場合は、「呼出状」とともに同封された質問票に必要事項を記載して裁判所へ返送すれば、呼び出しが取り消される場合がある。
Q10:乗船中、留守宅に通知がきたことを知った場合、会社都合で下船が困難なとき、会社が発行する乗船証明書などを裁判所に提出すれば、辞退が認められるか。
可能。そのような客観的な疎明資料の提出があれば手続もスムースに行くので裁判所へ提出する。
Q11:船員であって、陸上休暇中に裁判員として参加しており、緊急的に乗船する必要が生じた場合「従事している仕事について、自ら処理しなければ著しい損害が生じるおそれのある重要な用務が生じた場合」に該当し、途中で辞退できるか。
個々のケースごとに裁判所が、その用務の重要性、自ら行うことの必要性、著しい損害が生じる可能性等を考慮して裁判員の仕事を行うことが困難であるかどうかを検討し、裁判員の辞任を認めるかを判断することになる。
Q12:乗船中に裁判所と連絡をとりあうことは、船内業務遂行上支障が生じかねないので、乗船証明書を提出することで辞退できないか。
乗船証明書等の疎明資料の提出があれば可能。
Q13:陸上勤務の工務監督は、裁判員として拘束されると運航上大きな支障が生ずるが、このような場合は辞退理由となるか。
他の者へ引継ぎができなければ認められることがあるが、裁判所が個別ケースごとに判断することになる。
Q14:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律、第112条(裁判員候補者の不出頭等に関する過料)で、船員であって乗船中の場合は、「正当な理由」ある不出頭として認められないか。
同条は、「呼び出しを受けた裁判員候補者は、裁判員等選任手続きの期日に出頭しなければならない」という規定。このような場合を避けるために、裁判員候補者名簿に登載された場合は、毎年12月ころに裁判所から通知書が送付されることになっており、その時点で乗船予定がわかっている場合は、同封された調査票に必要事項を記載して裁判所へ返送することで、その時期の呼び出しが考慮される。
次に、裁判員等選任手続期日から遡って6週間前に裁判所から「呼出状」が送付されることになっており、その時点で乗船予定がわかっている場合は、「呼出状」とともに同封された質問票に必要事項を記載して裁判所へ返送することで、呼び出しが取り消される場合がある。

裁判員として参加する場合の取扱

Q15:裁判員(候補者も含め)に選ばれたという証明書のようなものは発行されるか。
裁判員候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭したり、裁判員として職務に従事したことの申し出があれば、本人に対し証明書を発行する予定。現在のところ、裁判員候補者については、「呼出状」の一部に設けている出頭証明書欄に証明スタンプを押印する方法等を検討している。また、裁判員として職務に従事すれば、別途証明書を発行することを検討している。
Q16:組織の中で仕事をする者にとって、職場の理解や処遇がなければ裁判員になることは非常に困難。会社には従業員が裁判員として選出されたことの連絡はないとのことだが、会社が当人を裁判員として正当な理由なく辞退させた場合には会社にも罰則を課すべきではないか。
いかなる理由があっても、本人の意思に反し、辞退を強要することはできない。会社は、本人が裁判員として職務を遂行するために休暇を取得したこと、現に裁判員であること、あるいは裁判員であったことを理由に解雇したり、不利益な取り扱いをすることは禁止されている。この禁を犯しても罰則は適用されないが、禁止されている以上、原状回復されなければならないことはいうまでもない。

旅費・日当

Q17:家からの旅費は支給されるとのことだが、船を下りた翌日が裁判所へ行く日などの場合は、寄港地からの旅費は支給されるか。
寄港地から裁判所に来た場合には、寄港地から裁判所までの旅費が支払われると思われるが、あらかじめ乗船日程が組まれており、下船した翌日が出頭であれば、6週間前に「呼出状」が届いた時点で質問票にその旨記載願う。事情があれば、呼び出しを取り消してもらえる場合があると思うが、あらかじめ裁判所に知らせること。
Q18:下船地(外地を含む)から居住地の裁判所まで遠距離の場合、旅費交通費の負担はどうなるか。
経済的な経路であることを前提に交通費が支給される。宿泊が必要な場合には宿泊費も支給される(7800円~8700円程度)。日当は1万円程度が支給される。
Q19:裁判所へ出頭するために外国で下船した場合も、旅費・日当は支給されるか。
裁判員の選任手続は、出頭日の午前中に行われるので、外国で下船した場合などは、物理的に裁判所への出頭ができないと思われる。
Q20:裁判所へ出頭する場合、外国からの移動に要する交通費等諸経費も支給されるか。また、交代者が職場(船舶)へ赴くための交通費等諸経費の負担はどうなるか。
外国からの出頭であっても、それに要した諸経費は合理的な基準により支給される。ただし、交代者に係る諸経費は支給の対象に含まれない。
Q21:単身赴任先から裁判所に行く場合は、旅費・宿泊費等はどのようになるか。
単身赴任先から裁判所に来た場合には、その単身赴任先から裁判所までの旅費が支払われるが、あらかじめ裁判所に連絡すること。
Q22:裁判所へ出頭する船員の代わりの船員が乗船するために、乗船地(外国を含む)へ赴く場合の旅費・日当はどうなるか。
裁判員として裁判所に来た日数に応じて日当や交通費が支給されるので、この場合は、各自の負担になる。

裁判員としての拘束期間

Q23:裁判員として出廷するのは約7割が連続3日程度と聞いているが、本当にその通りに実行されるか。初めから審理に参加して3日で終わるとは思えないが。
裁判では、法廷での審理を始める前に、裁判官、検察官、弁護人の三者でポイントを絞ったスピーディーな裁判が行われるように、事件の争点や証拠を整理し、審理計画を明確にするための手続(公判前整理手続)が行われる。
また、できるだけ連日的に開廷することになっているので、約7割の事件が3日以内で終わると見込まれている。事件によっては、もう少し時間のかかるものもある(約2割の事件が5日以内、約1割の事件が5日超)。
Q24:裁判員に一度選出されたら、次回からは対象外となるか、それとも何度でも選出される可能性があるか。
毎年行われる候補者選定の対象からは除外されないが、
(1)過去5年以内に裁判員の職にあった者
(2)過去1年以内に裁判員候補者として裁判員等選任手続きの期日に出頭したことのある者(ただし辞退が認められ不選任となった者を除く)
は、辞退の申し立てをすることができる。

罰則について

Q25:単身赴任で受取人が不在のため、期日までに返事ができなかったり、出頭日に出頭できなかった場合、ペナルティーは課せられるか。
できるだけ早く事情を裁判所へ連絡すること。やむを得ない事情であると認められれば、罰則は科されない。
Q26:裁判員を正当な理由なく辞退した場合には、罰則があるということだが、内容はどのようなものか。
正当な理由なく辞退した場合とは具体的には、呼び出しを受けた裁判員候補者が選任手続きの期日に出頭しなかったり、裁判員に選任された者が公判期日に出頭しなかった場合が想定されるが、こうした場合には10万円以下の過料(行政罰)に処せられる。
Q27:裁判員に選出された者が本人の意思でどうしてもやりたくない場合、法律で強制するのは問題ではないか。
裁判員制度は国民の司法への参加を図るために導入されたものなので、裁判員へ就任することの意義を理解いただきたい。
主体的に参加する場合には、その役割遂行に精神的にも経済的にも負担が伴うが、それを理由とした辞退を無制限に認めたのでは裁判員となる者が特定の国民に偏る恐れがあり、裁判員制度を公正に運用することができない。そうしたことを避けるために行政上のルール維持の観点から最低限の過料を設けたもの。

裁判員の安全確保・災害補償

Q28:身の危険はないとされているが、本当にそうなのか。暴力団関係の裁判などでは顔が知れた以上報復行為を受ける可能性が十分あると思われるが大丈夫か。自分だけでなく身内にも危害が及ぶのではないか心配だ。
裁判員や裁判員であった人やその家族を脅した場合はもちろん、困らせる行為をした者は厳しく処罰される。また、裁判員や裁判員だった人は、評議の秘密を守る義務を負うが、これも誰がどのような意見を述べたかがわからないようにすることで、裁判員への不当な接触のきっかけを作らないようにする意味もある。
なお、事件関係者から危害を加えられる恐れのある例外的な事件(暴力団などの組織犯罪)については、裁判官だけで裁判を行う場合がある。
Q29:刑罰が課されることを承知していながら罪を犯した者である以上、裁判員へ危害を及ぼしたら罰せられるといくら法律で定めてあっても、裁判員への逆恨み犯罪の予防はできないのではないか。
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律では、裁判員等への威迫罪を定め、2年以下の懲役または20万円以下の罰金に処すこととしている。反社会的な組織が介在する凶悪事件であって、将来に向け裁判員への危害が相当程度想定されうる場合には、裁判員が参加せず裁判官だけで審理を行うことはあり得る。
Q30:公判終了後、あるいは裁判終了後の裁判員への安全上の保護はどのように行われるか。また、本件訴訟に関連して傷害等の被害を受けた場合、どのような災害補償がされるか。
制度上、特段の保護措置はない。ただし、事案の性質により裁判所が個別に必要な措置を講じることはあり得る。また、裁判員であるがゆえ、あるいはあったがゆえに受けたと推認される傷害等に関しては、相当因果関係が認められる場合には公務災害と認定されることがある。
裁判員等としての出頭途上・帰路上に生じた単なる交通事故等については、公務員に準じた通勤災害として認定される。
Q30:裁判員として公判に参加したことでメンタル上の疾病に罹患した場合の災害補償はどうなるか。
現在、法務省で検討中です。

裁判員選任の流れ

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