洋上投票制度

―船員の公民権行使―洋上投票制度の充実に向けて

「洋上投票」は指定船舶に乗船中の日本人船員の不在者投票制度の一方法です。平成11年(1999年)に公職選挙法施行令の一部が改正され、平成12年(2000年)6月に実施された第42回衆議院総選挙の投票からFAXによる投票が可能となりました。
洋上制度と諸手続きなどについて、Q&A方式で紹介します。

洋上投票制度のあらまし

【洋上投票の手続の流れ】

洋上投票の手続きの流れ

船員の乗船中における投票

選挙人名簿登録証明書の交付を受けた船員は、次の三つの方法で特別な不在者投票ができます。

【個人投票】
総務省令で指定する市区町村(指定港)での不在者投票=指定港所在の選挙管理委員会に出向いての個人投票。
【船内投票】
船舶内での不在者投票=船長または代理人が指定港の選挙管理委員会で投票用紙の交付を受け、船内で投票。船内の不在者投票管理者は投票された票を選挙管理委員会に郵送する。
【洋上投票】
総務省令で定める指定船舶内での不在者投票=船長または代理人が指定市区町村の選挙管理委員会で洋上投票送信用紙等の交付を受け、船内で投票。指定された選挙管理委員会にファックス送信する。その後、投票用紙をまとめて交付を受けた選挙管理委員会に返還(送致)する。

船員の不在者投票

ファクスによる洋上投票

「選挙人名簿登録証明書」の取得方法

選挙人名簿登録証明書の交付を受けた船員は、次の三つの方法で特別な不在者投票ができます。

:「選挙人名簿登録証明書」の取得の方法について説明してください。

「選挙人名簿登録証明書」を取得するには、選挙管理委員会で『証明書交付申請書』をもらって、申請書に必要事項を記入し、船員手帳(船員である旨の証明でも可)を添えて、各人が選挙人名簿に登録されている市区町村の選挙管理委員会に提出すれば交付されます。(有効期間は7年間です。)
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船員の不在者投票

:船員個人が入港地の選挙管理委員会に直接出向いて、期限有効な「選挙人名簿登録証明書」を提示して不在者投票を行う場合、いつから投票できますか。

公示の翌日から投票日の前日までの間投票できます。前述(1)のケースの場合、公示前では立候補者が決まっていないので投票はできません。また、投票用紙の交付も受けられません。これは、(2)の船内投票の場合も同様です。

:公示日から投票日の前日までの選挙期間中であれば、千葉港で投票用紙をもらって神戸港で投票することはできますか。

できます。このケースは前述(2)の船内投票の場合に該当します。千葉港で最寄の選挙管理委員会で投票用紙の交付を受け、千葉―神戸の航海中の船内で投票し、その投票用紙を神戸入港の際に各人が登録されている地区の選挙管理委員会宛に郵送するということになります。
配達日数を考慮して開票前に確実に届くようにしてください。

指定港・指定選挙管理委員会とは

:指定港とはどういった場所ですか。

指定港一覧

公職選挙法施行規則の別表第二として、定められています。日本国内の422カ所の選挙管理委員会で、各都道府県の代表的な例は別掲を参照してください。
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:指定選挙管理委員会とはどういった場所ですか。

指定市町村選挙管理委員会連絡先一覧

公職選挙法施行規則の別表第三として、定められています。
全国54ヶ所の選挙管理委員会です。指定船舶からのファックスによる洋上投票の投票用紙が受信できる装置を備えた選挙管理委員会で、船舶の船籍とか、地域のバランス、船員数などを考慮して指定されています。場所は、別表を参照してください。
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洋上投票制度が変わりました

総 務 省

洋上投票制度は、船員が船舶上でファクシミリ装置を用いて行う不在者投票制度です。公職選挙法の改正に伴い、平成29年4月10日から洋上投票制度の対象となる者の範囲を拡大しました。

Point1

洋上投票することができる船舶の範囲の拡大
洋上投票をすることができる船舶に、いわゆる便宜置籍船(外航船舶運航事業を営む日本の事業者が使用する外国船舶)が加わりました。

Point2

不在者投票管理者及び立会人がいない船舶での洋上投票の手続きの整備
これまで洋上投票は、不在者投票管理者(船長)及び立会人がいる下で行われていましたが、不在者投票管理者及び立会人が居ない船舶でも洋上投票をすることができるよう手続きを整備しました。

Point3

洋上投票の対象となる船舶の範囲の拡大
洋上投票制度の対象となる船員に、実習生等が加わりました。実習生が洋上投票を行う場合には、地方運輸局等から交付される練習船実習生証明書をの添付上、お住まいの市町村の選挙管理委員会に申請して選挙人登録証明書の交付を受けることが必要です。

※詳しくは、総務省、最寄りの都道府県または洋上投票の事務を行う市町村の選挙管理委員会(指定市町村の選挙管理委員会)におたずねください。
指定市町村の選挙管理委員会は、総務省ホームページに一覧を掲載しています。

投票用紙の交付はいつ? (不在者投票の場合) 公示後の請求

:選挙公示または告示がされ、投票日が決まれば投票用紙の交付は受けられるのですか

投票日の設定基準は、任期満了による選挙は、議員の任期が終了する30日以内。解散による場合は、解散の日から40日以内に行うこととなっています。したがって船員は、選挙の期日の公示又は告示があった日から選挙の期日の前日までに、選挙人名簿登録証明書及び船員手帳を提示して、不在者投票における投票用紙及び投票用封筒の交付を請求することができます。

洋上投票の投票送信用紙の交付はいつ? 公示前の請求―公示前の交付

:本船の予定動静により、洋上投票実施を予定しているのですが、不在者投票との違いはどんなところですか。

指定船舶である外航船・遠洋漁船等に認められている特例は、選挙公示前でも事前に投票送信用紙が交付されるという点です。しかし、指定船舶であっても、洋上では投票送信用紙の交付は受けられません。日本国内の港で、船長または船長の代理人が指定区市町村の選挙管理委員会に直接出向いて請求をし、投票送信用紙および投票送信用紙用封筒の交付を受けておく必要があります。

:洋上投票も、投票用紙の交付の時期なり方法が問題ですね。投票送信用紙を外地で受け取ることはできないのですね。

できません。あくまでも日本の指定された選挙管理委員会の窓口でなければ交付されません。

【郵送による不在者投票用封筒】
様式十九(第十三号様式の七)郵便による不在者投票用封筒
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投票用外封筒

投票用内封筒

備考

・外封筒に押すべき都(道府県)(市)(区)(町)(村)選挙管理委員会印については、第五号様式(衆議院又は参議院の選挙の投票用紙の様式)の備考四及び五に準ずる。
・外封筒の表面には、投票区名その他必要と認める事項を余白に記載することができる。

投票用紙の郵送(不在者投票の場合)

:船内で投票した投票用紙を、入港地の最寄の選挙管理委員会に直接持ち込めば、各人の登録地区の選挙管理委員会に郵送してくれますか。

郵送してもらえます。不在者投票で個人投票の場合は、入港地の最寄の選挙管理委員会に出向いて投票するわけで、そこからその人の登録されている地区の選挙管理委員会に投票用紙を送るので、個人が郵送することはないのですが、船内投票の場合は、最寄の選管に持ち込むか、直接、登録地の選管に郵送するか、いずれかになりますね。

郵送料金の請求

:船内投票をして、船員が直接登録地の選管に郵送した場合、郵送料は請求できますか。

投票用紙等申請書

郵送料金の請求用紙は選挙管理委員会にありますので、投票用紙をもらうとき一緒にもらってきます。
郵送料金は一律一人(一票につき)727円と定められています。白票でも投票用紙は郵送されますから郵送料金の請求はできますが、棄権した場合は、投票用紙が郵送されませんので郵送料金の請求はできません。
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ファックス投票用紙はどんな様式

:洋上投票のファックス投票用紙はどんな様式ですか。

投票送信用紙見本

  1. 投票送信用紙見本 その1
  2. 投票送信用紙見本 その2
  3. 投票送信用紙見本 その3

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別掲の通り参議院議員選挙では、選挙区選出と比例代表選出の区別があるので、注意が必要です。
投票された用紙は、ファックスによって「指定選挙管理委員会」に送信されます。それを特別なシールドファックス受信装置により受信した「指定選挙管理委員会」では、投票用紙を可視部分と目隠し部分とに分離し、可視部分を封筒に貼り付け、目隠し部分はそのまま封筒に入れて、投票した船員の名簿登録地の選挙管理委員会に送付することになります。

指定選挙管理委員会との通信

:洋上投票用紙の送信先のファックス番号は、いつ知らされますか。

投票用紙を交付した選挙管理委員会は、交付した船舶に送信先のファックス番号を通知し、選挙管理委員会と本船の間で選挙投票前に送信試験を行い確認がなされます。

立候補者氏名などの情報周知について

:中南米や南米東岸海域を航行中の船舶では、短波ファックスニュースの受信状況が不良なので、立候補者の情報を得ることが出来ないのですが。

共同通信社では、03年から送信所をマレーシアのペナンに移動した事から、不感地帯が広がった経緯があり、それをカバーするため、衛星通信を利用したEメールによるニュース送信を平成16年4月1日から開始しました。

ファックス投票の注意点は

:ファックスで投票する際の注意点等があったら教えてください。

選挙管理委員会から「船舶から同じ投票用紙を二度ファックス送信してきたケースがあり、誤投票(無効票)につながるので注意願います」との情報がありました。
なお、送信側ファックスの機種によっては、送信面に裏・表の違いもありますので、白紙を送信しないよう注意が必要です。

洋上投票に要した通信費の請求

:ファックス送信に要した通信費は誰が負担するのですか。

ファックス送信に要した通信費等の諸費用は、選挙管理委員会から支払われます。本船から所定の請求書により、選挙のあった日からその年度内が精算期限です。05年9月の衆議院総選挙の場合は、来年3月末日までとなります。

:投票済み投票用紙等を郵送で返還する場合に要した費用は誰が負担するのですか。

ファックスの諸費用と同様に選挙管理委員会から支払われます。

不在者投票管理者・投票立会人

:不在者投票管理者はだれが担当しますか。

公職選挙法で定める不在者投票は、不在者投票管理者が選任され、その管理のもとに実施されることとなります。船内投票、洋上投票ともに公職選挙法施行令で、不在者投票を行う当該船舶の船長を不在者投票管理者とすることが定められています。

:投票立会人とは?

投票が公正・適正に行われているかどうかを監視する役目です。

休暇中・陸上勤務中の投票

:休暇中・陸上勤務中の船員が投票する場合は一般の有権者と同じですか。

投票日が決定されると、有権者の自宅あてに投票用紙交換案内状(はがき)が郵送されてきます。船員の場合も、自宅にいればその案内状を持って投票所に行き投票します。(期日前投票でも同じです。)
しかし、「選挙人名簿登録証明書」(有効期間7年)の発行を受けている場合は、「公職選挙法施行規則」で「選挙人名簿登録証明書」の提示を求められます。必ず携帯してください。投票用紙を交付したことが証明書に記載されます。
また、このため下船時を含め、自分の手元に必ず「証明書」を所持しておく必要があります。

:「選挙人名簿登録証明書」を紛失または失効してしまった場合はどうなりますか。

紛失してしまった場合は、交付を受けた選挙管理委員会に紛失届けを提出して、再発行を至急受けてください。
「証明書」の有効期限(7年)切れや、転居した場合は、至急、前記の「選挙人名簿登録証明書」の取得手続きを再度行ってください。

むすび ―海員の一票行使― 結果の積み重ねが問題点解消に

組合は、引き続き、投票促進に向けたPR活動を関係先と連携し取り組んでいきます。これまでの選挙を通じ、現行制度には改善すべき多くの課題が指摘されています。真の船員の公民権行使制度とするためには、実績としての洋上投票数を着実に積み重ね、船員にとって使いやすい制度に変えていくための政策対応を結実させていく粘り強い運動が必要です。組合員のみなさんのご協力をいただき、今回の選挙では前回を上回る投票実績の結果をあげたいと考えています。

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