主要な政策活動

船員税制への取り組み

海洋国日本における、日本人船員のわが国の経済発展や食料供給など国民生活維持に果たす重要性について明らかにした上で、その必要性(確保・育成)について国民の共通理解と世論形成が必要であると考え、そのために必要な活動を積極的に展開しています。

国(所得税、社会保険料、航海日当などに関するもの)に対する活動として、各船主団体・国土交通省・水産庁などを巻き込んだワーキンググループを設け問題点の整理に取り組んでいます。

さらに、船員は陸上で働く労働者と異なり職場が海上であり地方・港町への居住可能であることから、住民税など、地方税における公平・公正な税制見直しにより、船員の居住による地域活性化をアピールする活動を全国海友婦人会とともに展開しています。

海洋基本法への対応

2007年7月に施行された海洋基本法は、海洋資源の開発、海洋環境の保全、海上輸送の確保、海洋の安全の確保さらには離島の保全、海洋に関する国民の理解の増進などの基本的施策が規定される包括的な基本法である。

第20条(海上輸送の被保)には、国が日本船舶の確保、船員の育成及び確保、国際海上輸送網の拠点となる港湾の整備その他必要な措置を講ずることが規定されています。第21条(海洋の安全の確保)には、主要な資源の大部分を輸入に依存するわが国の経済社会にとって海上輸送の安全や海洋における秩序の維持が必要不可欠であると明確にうたわれています。

日本国民の生活・経済の維持・発展のため、当該法に基づき政府が海洋の安全の確保すなわち船舶と船員の生命の安全確保を推進しなければならないとの観点から、必要な措置を求める活動を展開しています。

また、第17条(海洋資源の開発及び利用の促進)には、水産資源の保存及び、管理、水産動植物の生育環境の保全及び改善、漁場の生産力の摺進が規定されている。第19条(排他的経済水域等の開発等の推進)では、同水域における開発等の推進が規定されていることからも、水産業の推進は国の基本的施策のひとつとして掲げられています。

これらを踏まえ、水産食料の自給率を向上し、食の安心・安全を確保する具体的方策を求める運動を強力に推進しています。

洋上投票制度の実施と今後の課題

1999年8月9日、公職選挙法の一部改正案が、第145通常国会参議院本会議で可決成立し、遠洋区域を航行区域とする船舶その他これに準ずる船舶(指定船舶)に乗船する船員を対象にして、洋上の船舶からファクシミリで投票できる「洋上投票制度」が導入されました。

洋上投票制度を利用できる指定船舶の範囲

  1. 漁船のうち指定された漁業に従事するもの
  2. 漁船以外の船舶で遠洋区域を航行区域とするもの
  3. 近海区域を航行区域とする船舶のうち国際航海に従事するもの

2000年6月に施行された第42回衆議院総選挙で、洋上投票を実施した川崎汽船「はんばーぶりっじ」

2000年6月に施行された第42回衆議院総選挙で、
洋上投票を実施した川崎汽船「はんばーぶりっじ」

洋上にある船員が直接投票に参加できる制度、「洋上投票制度」は、私たち船員が日本国民として等しく公民権行使の保障を求める重要な政策活動であり、半世紀以上にわたる海員組合や関係者の運動の積み重ねがありました。そしてようやく悲願が実現し、2000年5月以降の国政選挙から適用されることになりました。

この洋上投票制度の実現により、2000年6月25日に施行された第42回衆議院総選挙で、日本選挙史上初めて洋上から769名の船員が、96隻の船舶からファクシミリによる歴史的な一票が投じられました。また、2001年7月29日に施行された第19回参議院通常選挙でも、635名の船員が101隻の船舶から史上2回目の洋上投票を行いました。

この洋上投票制度は、公職選挙法の不在者投票の一種として制度化されましたが、多くの改善すべき課題が残されております。まず対象となる選挙は、衆議院議員総選挙と参議院議員通常選挙の国政選挙のみで、補欠選挙や首長選挙など地方自治体選挙は対象外となっています。

洋上投票に参加できる船舶も、日本船籍の外航船や指定された遠洋漁船など一部の船舶に限られ、日本人船員であっても外国籍(圧倒的に隻数の多い便宜置籍船など)の船舶に乗る者は対象外とされること、また、選挙人の確認や投票用紙の交付手続き、通信費用の精算方法など洋上投票の手続きも煩雑で使い難い制度になっています。

海員組合は、洋上投票制度を真に船員の公民権行使・保障できる制度に育て上げるまで継続し、かつ粘り強く活動を続けます。

船舶航行の安全確保と重大海難事故の防止

1997年の年明け、ロシア籍タンカーのナホトカ号が荒天の日本海で船体切損し沈没、大量の流出重油が福井県三国町はじめ広範な日本海沿岸を汚染し、その処理に莫大な費用と労力を要しました。このような重大海難事故を未然に防止するため、海員組合は近年、入港国政府による外国籍船舶のチェック体制の強化、すなわちポートステートコントロール(略称:PSC)体制の充実を政府に求めて活動してきています。

このPSC制度は、入港する外国籍船舶が安全に航行するための国際条約基準に合致しているかどうか徹底的にチェックし、不備が認められる船舶には改善命令を発令し、場合によっては航行を差し止めるという強権も発動できる制度です。便宜置籍船の増大に伴って欧米諸国を中心に1980年代から導入され各国が連携を取りながら積極的に活用されています。

わが国政府も1990年代に入り先進海運国の例にならって充実を図り、アジア・オセアニア地域のPSCセンターとしての役割を担いつつあります。海員組合は、全国港湾労働組合協議会(略称:全国港湾)とも緊密に連携し日常的に実施しているITF/FOCキャンペーン等の際には、船乗りの目からみたPSCチェックを実施し、救命艇など救命設備の整備状況、居住環境や労働環境など、必要ある場合は政府検査官に通報し改善命令を出させるなどの活動を行っています。

2001年2月10日に、ハワイ・オハフ島の南10海里付近で、宇和島水産高校の漁業実習船「えひめ丸」499トン(35人乗り組み、うち実習生13 名)が、米国原子力潜水艦「グリーンビル号」に衝突され沈没しました。米国コーストガードと米国海軍の捜索救助艇により乗員26人が救助されましたが、9人は行方不明となりました(その後の捜索により8人が遺体で発見されました)。

海員組合は、事故直後直ちにアメリカ大使館を訪れ、アメリカ合衆国政府に対し、20年前の日昇丸事件(鹿児島県沖で米原潜・ジョージワシントン号に当て逃げされ沈没、2人が亡くなった)の教訓に学んでいない今回の悲惨な事件に怒りを込めて抗議するとともに、乗組員の救助、事故原因の徹底解明、情報の全面的開示および完全な補償の確約とともに、再びこのような事故を発生させないよう強く要請しました。(えひめ丸事件に対する海員組合の取り組みは、機関誌「海員」2001年8月号に詳細を掲載しています)

海上保安庁の「平成13年における船舶海難と人身事故の発生と救助の状況」によれば

2001年(平成13年)のわが国周辺海域で発生した船舶海難は2,836隻、人身事故者数は2,818人で、これらに伴う死亡・行方不明者数は152人にのぼっています。

過去10年間の平均海難隻数は2,558隻/年で、関係者の努力にもかかわらず海難事故の増加傾向に歯止めをかけることができませんでした。最近の傾向としてプレジャーボート等の海難事故が増加し、平成13年も前年に引き続き過去最悪の数となりました。漁船等は前年に比べ131隻減の967隻、貨物船は 33隻減の334隻となっています。

海難の原因は、見張り不充分、船位の不確認、気象・海象に対する不注意等の運航の誤差や機関の点検・取扱不良等のいわゆる「人為的要因」によるものが依然として海難全体の約7割を占めている状況にあり、このため、日本海難防止強調運動実行委員会では2002年7月16日から31日まで全国海難防止強調運動を展開しました。

また、わが国の海岸に座礁・乗り上げ事故等により放置されている外国籍船舶の処理の問題で、政府・関係行政機関、地方自治体に対し、迅速に事態を解決できるよう必要な法整備を行うべきだとの考え方を示し働きかけを行っています。

現在、こうした放置船舶は12隻を数えており、所有者が特定できない、撤去の費用が負担できないなどの理由から長期間放置のままといったケースが大部分で、海岸周辺の環境破壊、漁業被害など多くの社会問題を生じています。海員組合は、こうした問題の早期解決のため提言し運動をしています。

日本漁業の発展的存続と漁業労働者の確保・育成のために

わが国の漁業は、各国による沿岸200海里(EEZ)設定や商業捕鯨の凍結、さけます流し網漁業の禁止や遠洋マグロ漁船の隻数規制といった国際ルールの強化により国際公海漁場から相次いで撤退を余儀なくされています。

水産物資源の持続的利用の観点から国際ルールが強化される一方で、国際的な水産資源管理機関に加盟しないFOC(便宜置籍)・IUU(違法、無報告、無規制)漁船が横行し、これら漁船の捕獲水産物が悪徳輸入業者・商社等によりに日本に大量に輸入されています。こうした違法な行為は、資源の減少・枯渇とあわせ、まじめに取り組む生産者の魚価安を招いており、漁業経営の基盤を揺るがし倒産業者が続出する深刻な状況にあります。

このような現況の下で漁業労働に魅力を失い離職する船員も増大、また後継者たるべき新たな若年労働力も不足して漁業産業全体が深刻な状況となっており、海員組合は全力でこうしたFOC/IUU漁船の排除のために国際的な舞台で連携して運動しています。

一方では、海員組合もその実現を目指して運動してきた「水産基本法」がようやく制定、水産業を食料安定供給の役割のほか多面的機能を持つ重要産業と位置付けた新たな水産政策を推し進めるメインエンジンが動き出すという、明るい将来を展望する状況も生まれています。

国民的合意のもとで水産物の自給率向上を含めた施策の検討が進んでいることは大いに歓迎できることであり、海員組合も各種審議会に代表を送って発言しています。将来に渡って日本漁業を維持・存続させ水産物を安定的に供給するためには、国際的資源管理の枠組の中で、生産性・経済性の高い漁業の構築、そしてなによりも漁業労働者が安心して働き、後継者が育つ環境づくりが必要であり、そのために私たちは奮闘しています。

規制緩和への対応、船員職業安定法の改定問題など

規制緩和の用語は今日すっかり定着したように見えます。いつの間にか、規制を緩和することが、経済の浮揚の切り札として使われている感もあります。

しかし、規制緩和であれ、社会生活を営む私たちへの政策は、国民経済と国民生活を前進させるものであることが大前提でなければなりません。 政府は1997年3月、交通運輸産業における需給調整規制の廃止方針を閣議決定し、各種審議会で論議してきました。

わたしたちに身近なところでは内航海運の船腹量調整(設備カルテル)、フェリー・旅客船事業や港湾運送事業における参入・運賃規制の廃止が進められています。
はたしてこれらの規制緩和が国民生活改善をもたらすでしょうか。

たとえば、離島航路の参入規制や運賃規制を廃止した場合、国民の移動する権利(交通権) を保障できるでしょうか。市場原理と自己責任原則にもとづき企業に委ねれば、不採算路線からはたちまち撤退してしまうに違いありません。離島航路などの生活航路は維持・存続が図れるよう国および地方自治体による配慮がなされるべきです。

また、荷動きの波動性がきわめて大きい港湾運送事業で、安定した貨物運送や労働者の雇用・労働条件が確保されるでしょうか。
わたしたちは、産業秩序を破壊し労働者の雇用と生活をおびやかす規制緩和、また交通弱者の交通権をおびやかす規制緩和には反対しています。

規制緩和の流れは単に産業の需給調整規制の緩和のみにとどまっていません。陸上労働分野では、すでに有料職業紹介事業や労働者派遣事業が一部の職種を除いて許可されています。海上労働分野においては、これらの事業は過去にボーレン(手配師)の横行で中間搾取の弊害があったことなどから政府や労働組合以外の者は行ってはならないとされています。

しかし、2001年3月に規制改革推進3か年計画の中で、船員の有料職業紹介事業や労務供給事業についても、一定の要件を備えた者に認める方向で検討すべきとの閣議決定がなされました。 現在、国土交通省を事務局として船員職業紹介等研究会のなかで議論をしています。

私たち組合はこの機会に業界にはびこっている違法マンニング(違法船員派遣業者)を排除し、船員の雇用形態を正常化することによって、わが国海運の健全な発展につながるように検討していますが、船員の働く場所である船舶を所有していない会社が船員を雇用し他社の船舶にのみ派遣するなど、船員の雇用不安を招くような提案には反対しています。

船員後継者の確保育成の課題

外航海運ではコスト競争力の面から外国人船員との混乗化が進み、船主は日本人船員の新規採用を極端に抑制しています。漁業分野は国際的な操業規制が厳しくなり、産業の先行き不安感などから、また内航海運においては、荷主の輸送コスト低減圧力により船員の労働条件や労働環境の改善が遅れていることなどから、若者が海運・水産業に就職しにくい環境になっています。

私たちは国民生活を維持し国内産業の発展に寄与するため、海運・水産業とそこに働く日本人船員の必要性を広く国民にアピールし、海運・水産業の健全な発展を求めていきます。

また、海事関連産業を含めて、企業は即戦力の海技者を求めています。今後、急速に進展する少子高齢社会への移行を念頭におき、海運・水産・港湾で働く有能な人材を確保するため、それぞれの産業に歓迎して受け入れられる船員教育制度の抜本的改革を求めていく必要があります。

平和な海を希求する活動、有事法制の制定に反対する

かつての太平洋戦争では、民間船員は根こそぎ戦時動員され、記録されているだけでも6万2000人の先輩船員たちが過酷極まる戦場の海で戦没しました。死亡率は陸軍・海軍軍人のそれを大きく上回るという痛ましいものでした。

当時、有無を言わさず民間船員を駆り出したものが、国家総動員法にもとづく「船員徴用令」をはじめとする有事法制です。「有事法制」には、罰則付きの「従事命令」が含まれると言われており、船員や海運業者もこの命令の対象です。

従事命令は、船員や港湾関係者、航空・鉄道・自動車などの輸送関係者、医師・看護婦といった医療関係者、土木・建設関係者など広範な国民を戦争に強制動員できる仕組みをつくるもので、憲法が第18条で禁止する「苦役労働の強制」そのものです。 「有事関連3法案」は、5月15日衆議院本会議で可決後、6月6日の参議院本会議で可決、成立しました。

今後、関連する個別法が審議されていくことになりますが、海上を職場とする私たちは、海の平和と安寧を求めて、引き続き有事関連3法、個別法の制定と有事法制の発動を許さない運動をいっそう推進していきます。

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