竣工式でお披露目
新たな北陸支部会館は、令和3年12月16日に地鎮祭を執り行い、約9カ月の工期を経て令和4年8月30日に完成した。三国船員会の歴史を引き継ぎ、日本海に面する支部として重要な役割を担うことから、旧北陸支部と同じ福井県坂井市三国町に建設する運びとなった。
8月30日に行った竣工式には、本組合からは、熊谷勝明北陸支部長、齋藤洋中央執行委員、髙橋健二中央執行委員が出席し、三国船員会からは岑田善也副会長、金澤信行元会長、山本勝治副会長が出席し、新北陸支部会館が末永く堅固で安全であるよう神事が執り行われた。
建物デザインは、北前船で栄えた三国湊の風景をコンセプトに、地域の伝統と歴史の一片を感じ取れる街並みに溶け込むよう木造平屋建てとし、住友林業㈱が設計・施工した。支部の目の前には三国港の北西部にあたる三国サンセットビーチが広がり、日本海に沈む夕日を一望できる
北陸支部の紹介
北陸支部は、福井県を拠点に富山、石川県の沖合底曳網漁船28社、サンマ棒受け網漁船3社、中型イカ釣り漁船2社、冷凍・冷蔵運搬船2社を担当し、日々の業務にあたっています。
支部のある三国町(福井県坂井市)は、福井県一の大河九頭竜川の河口に位置し、多くの河川が合流し古くから河川の船運が盛んで、日本海にも面していることから、越前地域の物資を河川で輸送し、それらを集積して他の地域へ運ぶ物流の拠点でありました。また、江戸時代中期から明治時代にかけて大阪と北海道を物資輸送し、これを売買して差益を得る北前船交易がはじまり、三国でも廻船業に力を入れ始め、日本海側有数の北前船の寄港地として繁栄した町です。
当時の繁栄ぶりは、今も要所各所に残るレトロな西洋建築や三国港突堤などの建造物によって当時を伺い知ることもできます。中でも北前船交易での繁栄が色濃く残る三国港付近は、歴史と文化の香り漂う老舗の和菓子店や提灯の店なども残っており、全国屈指の賑わいであったとの資料も残っています。
三国港の繁栄は、明治時期に鉄道が開通し、物流の中心が船から鉄道へ移りだすと、北前船交易により行き交った人々や賑わいは徐々に無くなりました。しかし近年は、当時の面影を残すノスタルジックな街並みの価値が見直され、当時の賑わいを取り戻そうと、地元有志らにより、街並みや建物の保全をはじめ、空き家を利用しリノベーションによる店が要所各所に見られるようになり、レトロでノスタルジックな街並みや食を求め、県内外からの観光客が訪れ賑わいを取り戻しています。
三国町は、職人文化の残る町でもあり、なかでも伝統和菓子は有名で、北前船の船乗り達から製法を学び、今に伝えられている「酒まんじゅう」や、300年の歴史をもつ三国神社山王の森で鳴く鶯より着想して命名した「鶯餅」は一度食べたら忘れないというほどの人気和菓子です。
また、福井の伝統工芸品「越前和紙」を骨組みに張り付けた「三国提灯」は、200年以上の歴史があり、山車が町を練り歩く三国祭り(北陸三大祭りのひとつ)の時期には、三国提灯が各家庭の軒先に吊るされ、町の人々をつなぐ文化として残っています。
そして福井県といえば蕎麦が有名です。三国町には代々続く歴史ある美味しい蕎麦屋が健在で、中でも辛味大根のおろし汁とダシを合わせた冷たい「おろし蕎麦」は格別で、おススメの一品です。
北前船が築いた歴史と文化、情緒が漂う三国町。日本海の好漁場が目の前に広がり、底曳網漁船で漁獲した越前ガニは、皇室に献上されることでも有名で、この三国町を訪ねる機会がありましたら、蕎麦とカニはぜひ味わってほしいと思います。ほかにも観光名勝の国指定天然記念物「東尋坊」や神宿る島「雄島」もあります。