国際活動

国際活動

1. 海員組合と国際運輸労連(ITF)

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  1. 本組合の国際活動を紹介する場合、わたしたち組合が加盟する国際産業別組織の国際運輸労連(ITF=International Transport Workers' Federation.の略称。本部:ロンドン)との関係をまず話さなければなりません。

    ITFは現在、世界各国の船員・交通運輸労働者437万人を結集、その社会的・経済的地位の向上を目指し、国際連合はじめ世界を舞台にさまざまな活動を展開しています。

    海員組合がITFと係わりを持つことになったのは、今から70年も前の戦前にまで溯ります。当時、本組合の前身であった「日本海員組合」の組合長・浜田国太郎は、1929年(昭和4年)第3回国際労働機関(略称:ILO)の海事総会の際、当時のITF書記長エド・フィメンと意見交換し覚書を交換、翌 1930年3月にはITF加盟が実現しました。それは、海運産業が他に比較して際立った国際性を有し、船員は七つの海を同じ共通の職場とする職業ですから、船員労働者の権利擁護・利益向上のためにはとても自然なことでした。

    こうして、戦前の日本では唯一、国際的労働組織と関係を持つ組合となりました。

  2. その後、日本にITF極東事務所が開設され、事務所長には日本海員組合の米窪満亮が就任しました。米窪満亮は1937年(昭和12年)に、船員出身では初めての国会議員となり、また1947年(昭和22年)にわが国に労働省が設置されるや、初代の労働大臣に就任した人でもあります。

    さて、海員組合は、日中戦争が本格化する1937年になりますと、当時の軍閥政府の強力な労働運動弾圧政策のなかでITFを脱退して関係を断絶、やがて組合の解散に追い込まれます。こうして日本は一層深く侵略戦争に足を踏み込んでいくことになります。

  3. 組合は戦後いち早く、1945年(昭和20年)10月、全日本海員組合として再建されますが、4年後の1949年10月、第8回大会でITF加盟を決議、翌1950年1月に再びITFに加盟、復帰することになりました。

  4. ITFの設立は1896年(明治29年)、本部はロンドンにあります。現在、147ヵ国から644の交通運輸関係の労働組合が加盟し、440万人の海・陸・空の労働者を組織しています。

    ITFは、第2次世界大戦中、ナチスドイツなどのファッシズムに反対し果敢な闘いを挑んだ組織としても有名です。1996年には100周年の記念大会を、2010年8月には第42回世界大会をメキシコシティーで開催しました。

  5. 現在、わが国から加盟している労働組合は、海員組合、全国港湾、航空連合、交通労連、私鉄総連、運輸労連、都市交、JR総連、全自交労連、JR連合、日航客乗、国労の13組織で、46万2400人が参画しています。

    これら労働組合は「ITF日本加盟組合協議会(ITF-JCC)」を設置し活動を続け、1996年にはITFのアジア太平洋地域事務所が東京・田町に開設され、日本事務所(1959年設置)と共同して業務に当たってきました。
    2002年9月にITF日本加盟組合協議会は交運労協と統合し、「交運労協(ITF-JC)」として活動しています。

  6. ITFの組織は、海・陸・空のそれぞれの分野に大別され、各分野とも特色ある活動を展開していますが、なかでも海運・港湾・水産にかかわる「船員部会」「港湾労働者部会」「水産部会」の活動は活発です。

    先程も述べたように、海上労働は陸上の労働と異なり、高い国際性と共通性をもっており、その特殊性ゆえに国際的な連帯行動は不可欠です。こうしたバックグラウンドがあって、海員組合の活動もITFとの関係を抜きには語ることができません。

    現在、海員組合では、森田保己組合長がITFの主要なポストである「運営委員」「執行委員」「アジア太平洋地域委員会副議長」「アジア太平洋船員地域委員会議長」等の要職に就き、ITFの活動を積極的にリードしています。

  7. また、海員組合は日本人船員(組合員)と一緒に船に乗り組み共に就労する外国人船員や、FOCキャンペーンによって組織した外国人船員を「非居住特別組合員」として組合に加入登録していますが、こうした主として発展途上国船員の福祉や教育、権利擁護のために、国際業務スタッフとしてフィリピン人スタッフを本部、マニラ、関東地方支部、関西地方支部などに相当数配置し、さらにはフィリピンのマニラ市、ヴェトナムのハイフォン市、中国の天津市、インドネシアのジャカルタ市に代表部を、ロンドン市には欧州事務所を設置し、要員を配置して活動しています。

2. ITFと便宜置籍船(略称:FOC)反対運動

  1. FOCキャンペーンに参加した仲間たち

    FOC・POCキャンペーンに参加した仲間たち

    海員組合がとくにITFと深く係わって進めている重要な活動に、便宜置籍船反対運動があります。

    便宜置籍船とは英語の(Flag of Convenience Ship =
    FOC)を日本語に訳した言葉です。

    この便宜置籍船について少し解説しますと、船舶には必ず所属する「国籍」を証明する証書が発行されますが、これは「船舶は領土の一部」との伝統的な国際ルールにもとづいており、船舶は登録された国籍を示す「旗」、例えば日本籍船は「日の丸」を掲げることが義務づけられています。

    そしてわたしたちは、その船の登録国のことを「旗国はどこか?」などと表現したり使ったりします。海上を航行する船舶や外国の港に入港中の船舶でも『旗国』の諸法規の適用が原則です。ですから、その船舶と『旗国』との間には「真正な関係」がなければならないとされています。

    ところが、戦後の1950年代から、その船舶が本来登録されるべき国から、便宜的にアメリカの支配下にあるパナマ・リベリアといった「他国=便宜置籍国」に移籍する便宜置籍船制度が一般化し、2009年には、こうした便宜置籍国の「旗」を掲げる船舶は、総トン数で世界の船腹量の約40%を占めるまでになりました。

    どうして、このような不正常なことが広がったのかといいますと、船舶の所有者(船主)は国内の諸法規はじめ様々な社会的規制から逃れて運送コストを安上がりにするため、船舶に関しては規制しないことを売り物にする国々の「旗」を掲げるだけで、より自由に商売できるという大変都合が良い制度だからです。

    一方、これら便宜置籍国は自国の「旗」を売ることで莫大な収入を得ているというわけです。最近は、こうした無責任な船舶国籍の売買に国際的な批判が高まっています。ITFに結集する私たち船員の組合は、この便宜置籍船制度に反対して長年にわたって活動してきました。

    なぜFOCに反対するかといえば、第1には、自国の船員に比べ低賃金の外国人船員を自由に使うことができるため、自国の船員の雇用や労働条件に極めて深刻な悪影響があるからです。

    日本の例でみても、約2,500隻といわれる国際海運に従事する日本商船隊のうち、日本人船員の乗船を義務づけている日本籍船は120隻にも満たない状態で、残る船舶はほとんどがFOCです。

    このため、かつては8万人を数えた外国航路で働く日本人船員も、現在では約3,000人になってしまいました。第2には、もともと厳しい規制から逃れるための制度ですから船の建造費も安上がり、安全管理もずさんで、劣悪な労働環境で働く船員の運航技術レベルの低さともあいまって、海難事故の多発や頻発する油の流出事故など「海の無法者」だからです。

  2. FOC・POCキャンペーンと国際連帯

    ITFがFOC制度との闘いを始めてから、60年余を経過しました。この間、さまざまな経験を蓄積し教訓を生かしながら活動のスタイルを定着させてきました。

    その活動は、第1に、FOC船に乗り組む無権利で劣悪な労働条件で働く船員(発展途上国船員が圧倒的に多い)をITFに加入組織し、船主との間でITFが認める労働協約を締結すること、第2には、FOC船に乗り組む船員の「賃金未払い」はじめ労働協約の不履行を監視・是正する活動です。

    こうした活動の目的は、国際海運における公正な船員労働の最低統一基準をクリアさせることで秩序を回復し、FOC船主に対して低賃金船員を使用出来ない環境をつくることにあります。

    このためにITFに加盟する世界の船員・港湾組合は、入港するFOC船を日常的に訪船し、乗組員や船主と話し合い、場合によってはストライキを指導・実施し、荷役作業を拒否して抗議するなどの活動を、お互いに緊密に連携しながら行っています。

    2010年度で見ると、日本の港で訪船したFOC船は延べ1,530隻にのぼり、また、賃金の未払いなどで船主と交渉し回収した金額は、43万6千ドルにもなります。ITFではこうした一連の活動を総称して「FOC・POCキャンペーン」と呼んでいます。ITFアジアFOC・POCキャンペーンには、日本・韓国・台湾・ロシアが参画し、広範囲にわたるキャンペーンが実施され大きな成果をあげています。

    また、東京船舶(株)の不当労働行為に対する本組合の闘いにも国際的な連帯の方針が採択されました。FOC・POCキャンペーンは、このように緊密な国際連帯のなかで行われる点が特徴です。ITFは、最終的にFOC制度の廃止を求めて活動しています。

3. ILOやIMOなどの国際機関での活動

国連の機関で、海上輸送に係わる諸問題を扱う国際海事機関(IMO)や労働問題を扱う国際労働機関(ILO)など、その他、関係する国際機関において、国際海運の秩序ある発展と安全運航、海洋環境の保全、公正な海上労働基準に関する国際条約・勧告の策定などについて、ITFとともに日本の海上労働者を代表して積極的に意見の反映に努め影響力を行使しています。

特にILOでは既存の海事関係条約を統合し新たにひとつの条約(海事統合条約)にまとめる作業を行い、2006年の2月に採択しています。

4. 捕鯨問題と私たち海員組合

  1. わたしたちの組合には、漁船に乗り組む船員の仲間も多数加入しています。わが国の水産業も国際経済の動向や、環境問題から生じる国際的な漁業規制によって大きな変化を余儀なくされ、漁船労働者もさまざまな影響を受けて来ました。

    現在、各国の意見が鋭く対立し、日本固有の食文化まで否定されようとしている問題に「捕鯨問題」があります。

    これまで、鯨類の保護や調査研究、捕鯨業の秩序ある発展のため、1948年、国際捕鯨取締条約が発効し「国際捕鯨委員会(略称:IWC)」が設けられましたが、近年は、アメリカ主導による商業捕鯨の全面禁止(1986年から実施)の決定、さらには、調査のための捕鯨(ミンク鯨)まで、一切の捕鯨活動禁止の要求をめぐり、日本やノルウエーなどの伝統的捕鯨国との間で厳しい論争が続いています。

  2. 世界の鯨類が1年間に食べる魚介類の量は世界の海面漁業の漁獲量の3~5倍にもなるとの研究報告がり、保護され増加しつつある鯨類による水産資源の捕食が漁業に与える影響について、国際的に注目されつつあります。

    また、日本が主張する捕鯨は、鯨類のなかでも最も繁殖率の高い小型種のミンク鯨が対象で、最近の調査では南氷洋海域だけでも76万頭以上の生息が確認されており、年々増加の傾向にあります。ミンク鯨の一方的な増加は、ナガスクジラなどその他の鯨類の生態系に悪影響をおよぼしているくらいです。

    日本が実施している南氷洋での年間400頭(プラス10%)と北西太平洋での100頭を限度とするミンク鯨の調査捕獲は、むしろ鯨類全体の生態系の保全のための調査として必要な措置といえます。

  3. 海員組合は毎年、日本代表団の一員として、またNGO(非政府組織)の一員として、IWCの年次会議に参加し、捕鯨活動は日本固有の文化であるとの観点から、また、海洋の貴重な食料資源として秩序ある持続的利用の立場から積極的に発言しています。

    1992年、リオデジャネイロで開かれた国連環境開発会議(略称:UNCED)でも「すべての海洋生物資源の持続可能な利用の原則」が採択されたように、資源の持続的利用は、今日、国際的に合意されている概念です。

    にもかかわらず、牛や豚などの家畜は、神によって人間に食べられるために創造された生き物だから同情の余地はないが、鯨類は人間に最も近い哺乳類。これを食べるなど野蛮極まる行為とばかり、感情的保護優先を主張する一部の「環境保護」団体と彼らが与える非科学的な誤った情報に対抗し、海員組合はITFはじめ環境保全と同時に資源の合理的利用を主張する内外の関係団体と連携して活動してます。

    また、こうした「環境保護」団体の圧力を巧みに利用し、独自の価値観を押し付けるアメリカと取り巻き国が、多数の横暴で会議を押し切るIWCの運営のあり方に対しても改善と是正を求めています。

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