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建築

写真:傍島利浩

全日本海員組合本部会館

海員組合の本部会館が完成したのは1964年。海員組合が、国に船員の意見を届けるため、組合結成の地である兵庫県神戸市から六本木(東京都港区)に拠点を移す際に建てられました。設計は、建築家・大髙正人(1923-2010)です。以来60年、組合員の「団結の象徴」として大切に使われ続けてきた本部会館は、現存する近代建築としても再評価され、2024年に大改修が行われました。建て替えではなく大改修を選ぶことで、海員組合は持続可能な未来へと前進しました。本部会館は、組合員の母港であり、地域と社会につながる場として、より海事・水産業の発展に尽力し、海の平和を拓いていきます。

1964

竣工当時の本部会館

海員組合の本部会館は、1964年に、当時、前川國男建築設計事務所から独立したばかりの建築家・大髙正人によって設計されました。特徴のないオフィスビルが林立する中で、ひとが快適に働けて、街の景観になるオフィスビル、という考えを大髙は大切にしました。敷地面積の制約を受けながらも、構造や意匠などに工夫を重ねて誕生したのが本部会館です。

竣工時の本部会館。現在の六本木とは異なり、周囲に高い建物がない。外壁は白いペンキで塗られている。(写真/雑誌「建築」1964年5月号から転載)
ベランダの庇や手すりなどは工場で製造したプレキャストコンクリートを使用。陰影のある彫りの深い表情を生み出している。
1Fロビー。床のタイルや手すり、照明などには、大髙が前川國男のもとで設計チーフを務めた東京文化会館(東京都・上野)と共通するデザインが用いられている。
1FロビーからB1Fホワイエを見ると、初代組合長・楢崎猪太郎銅像が目に入る。
地下空間に光を届けるために設けられたサンクンガーデン。
1FとB1Fを繋ぐ階段。左手にはサンクンガーデンが見える。
地下の大会議室。国際会議が開催できるように設計された。
ストライキがさかんだった1965年当時、大会議室は労働争議の場となった。
竣工時にあったスナックバー(食堂)。現在は図書資料室になっている。
スナックバーの入口。
階段やエレベーターを収めた大きな2つのコアで建物を支え、柱をなくしたオフィス空間。
部屋のサイズや、机などの配置が必要に応じて変えられるよう、可動間仕切りが職人の手で作られた。

大髙正人

1923-2010年。福島県三春町出身。東京大学第二工学部建築学科卒業後、同大学院研究生。前川國男建築設計事務所勤務を経て、1962年に独立。建築のみならず都市計画の分野でも建築界を牽引した。代表作に、千葉文化の森、坂出人工土地、広島市営基町高層アパート、みなとみらい21基本計画ほか。
2024

2024年の大改修

竣工以来、60年にわたって本部会館は増築や改修をくり返しながらもていねいに使われてきましたが、老朽化や耐震問題などを踏まえて、2007年には、建替えや移転、大規模改修などが検討されるようになりました。
 そんな中、2016年に国立近現代建築資料館で「社会と建築を結ぶ - 大髙正人の仕事」展が開催され、現存する大髙建築として本部会館が大きく注目されるようになりました。さらに、DOCOMOMO Japan(ドコモモ・ジャパン)により、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の代表作品として選定されました。
 そのような背景も後押しとなり、全日本海員組合は、組合の歴史そのものであり、組合員の「団結の象徴」である本部会館の大改修を行い、継続利用するという選択をしました。
 大改修は、大髙の事務所出身で、歴史的な建物の保存・継承活動にも携わってきた建築家・野沢正光に依頼し、2023~2024年にかけて野沢正光建築工房設計のもと、竹中工務店の施工によって行われました。2024年11月に竣工いたしました。

撮影…傍島利浩
撮影…傍島利浩

野沢正光

1944-2023年。東京生まれ。東京藝術大学美術学部建築科卒業後、大髙建築設計事務所を経て、1974年に野沢正光建築工房設立。2013年に社団法人住宅遺産トラスト発足、代表理事に就任。いわむらかずお絵本の丘美術館、立川市庁舎、愛農高校森館小谷校舎、愛農学園農業高等学校本館、ソーラータウン府中、飯能商工会議所、AQ Group本社屋など多くの建築を手掛ける。『郊外を片づける』(新建新聞社)、『野沢正光の建築』(エクスナレッジ)、他著書多数。横浜国立大学、武蔵野美術大学、法政大学大学院、他多数の大学で教鞭を執る教育者でもある。
2024

2024年大改修

大改修は、「全日本海員組合本部会館歴史調査および将来構想委員会」が調査を行い、野沢正光建築工房による改修設計のもと、2023年1月10日から改修着工、2024年11月30日に工事が完了しました。 64年の竣工時の仕上げや形状を保存し修復するとともに、温熱性能や換気、照明、耐震性などを改善し、現代に見合った省エネルギーで快適な執務環境を実現。さらにこれは、歴史的な建物を使い続けながら保存するという試みにもなっています。ぜひ大改修以前と以後のようすをご覧ください。

撮影│傍島利浩
外観
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エントランス
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1Fロビー
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1FからB1Fを見る
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増築されていたオフィスを撤去し、サンクンガーデンが復活
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B1Fホワイエ
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地下大会議室
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執務室
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屋上
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スナックバー食堂)図書資料室
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レストルーム
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宿直室→展示室
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建物概要

全日本海員組合本部会館
竣  工:1964年
設計監理:大髙建築設計事務所
構  造:青木繁研究室
設  備:井上嘉雄
施  工:鴻池組
改  修:2024年
設計監理:野沢正光建築工房
構  造:山辺構造設計事務所
設  備:ZO 設計室
施  工:竹中工務店
DOCOMOMO Japan│2016年度
JIA優秀建築賞│2025年度
第59回日本サインデザイン賞 銅賞│2025年