
建築

全日本海員組合本部会館
海員組合の本部会館が完成したのは1964年。海員組合が、国に船員の意見を届けるため、組合結成の地である兵庫県神戸市から六本木(東京都港区)に拠点を移す際に建てられました。設計は、建築家・大髙正人(1923-2010)です。以来60年、組合員の「団結の象徴」として大切に使われ続けてきた本部会館は、現存する近代建築としても再評価され、2024年に大改修が行われました。建て替えではなく大改修を選ぶことで、海員組合は持続可能な未来へと前進しました。本部会館は、組合員の母港であり、地域と社会につながる場として、より海事・水産業の発展に尽力し、海の平和を拓いていきます。

竣工当時の本部会館
海員組合の本部会館は、1964年に、当時、前川國男建築設計事務所から独立したばかりの建築家・大髙正人によって設計されました。特徴のないオフィスビルが林立する中で、ひとが快適に働けて、街の景観になるオフィスビル、という考えを大髙は大切にしました。敷地面積の制約を受けながらも、構造や意匠などに工夫を重ねて誕生したのが本部会館です。














大髙正人

2024年の大改修
竣工以来、60年にわたって本部会館は増築や改修をくり返しながらもていねいに使われてきましたが、老朽化や耐震問題などを踏まえて、2007年には、建替えや移転、大規模改修などが検討されるようになりました。
そんな中、2016年に国立近現代建築資料館で「社会と建築を結ぶ - 大髙正人の仕事」展が開催され、現存する大髙建築として本部会館が大きく注目されるようになりました。さらに、DOCOMOMO Japan(ドコモモ・ジャパン)により、「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」の代表作品として選定されました。
そのような背景も後押しとなり、全日本海員組合は、組合の歴史そのものであり、組合員の「団結の象徴」である本部会館の大改修を行い、継続利用するという選択をしました。
大改修は、大髙の事務所出身で、歴史的な建物の保存・継承活動にも携わってきた建築家・野沢正光に依頼し、2023~2024年にかけて野沢正光建築工房設計のもと、竹中工務店の施工によって行われました。2024年11月に竣工いたしました。



野沢正光
2024年大改修
大改修は、「全日本海員組合本部会館歴史調査および将来構想委員会」が調査を行い、野沢正光建築工房による改修設計のもと、2023年1月10日から改修着工、2024年11月30日に工事が完了しました。 64年の竣工時の仕上げや形状を保存し修復するとともに、温熱性能や換気、照明、耐震性などを改善し、現代に見合った省エネルギーで快適な執務環境を実現。さらにこれは、歴史的な建物を使い続けながら保存するという試みにもなっています。ぜひ大改修以前と以後のようすをご覧ください。
撮影│傍島利浩























建物概要
竣 工:1964年
設計監理:大髙建築設計事務所
構 造:青木繁研究室
設 備:井上嘉雄
施 工:鴻池組
改 修:2024年
設計監理:野沢正光建築工房
構 造:山辺構造設計事務所
設 備:ZO 設計室
施 工:竹中工務店
DOCOMOMO Japan│2016年度
JIA優秀建築賞│2025年度
第59回日本サインデザイン賞 銅賞│2025年

